2014年5月16日金曜日

どうせ死ぬならがんがいい(13)

 近藤氏は、胃がんの手術で胃を全摘出したり、大きく切除したりすることは誤りであると考えています。ほかの臓器に転移している本物の胃がんなら、胃を全部取っても治らないから、痛い思いをするだけ損ですというわけです。なるほどと、納得します。

 がんの治療には、外科手術、抗がん剤の投与、放射線治療、免疫療法などがあるのでしょうが、免疫療法などは、まだその緒についたばかりの感じがします。いずれにしろ、がんの治療のために大きな手術はしたくありません。本人も大変ですが、周りもたいへんです。また、食事を口ではなく、胃に流し込むこともしたくないと思っています。死ぬ間際まで、話したいと思っています。最期は、周囲のひとたちに感謝の言葉を述べて死にたいと思います。また、喉を取られたら、あの世に行ってもカラオケが出来ません。

2014年5月14日水曜日

どうせ死ぬならがんがいい(12)

 検診で前立腺がんの人を見つけて「手術するか、放射線にするか」と迫ってくる。近藤氏に言わせれば治療する必要性を認めないがんに、放射線をじゃんじゃんかけて前立腺を虐殺してるんです。それでも副作用がなければいいけど、ひどいときには人工肛門になったりするんです。

 わたしの場合も前立腺肥大で尿の間隔が短くなったので、その治療のみに行ったら、「前立腺が大きいからちょっと削ろう」ということで、削りました。
 次に、「念のために細胞を調べましょう」ということになって、調べるとがん細胞がありました。その医者は、「再発の懸念がないように全摘出しましょう」ということになりましたが、「ちょっと待ってくれ」と調べると、前立腺の全摘出は尿洩れに困っていると言う人も多く、コンプリートなEDになるということもあって、これはやめようと決め、放射線治療を選びました。38日間通院しました。
 その結果、もう4年になりますが、数値も限りなくゼロに近いものです。放射線治療を選ばずに放置しておくという手段もあったようですが、なかなか周りが許しません。がんで外科手術を選ばれた方も放置するという決断がなかなかできなかったのではないでしょうか。わたしも心臓のバイパス手術など大きな手術をしましたが、さて胃がんが分って切るかと言うと内視鏡によるものまででしょう。開腹までして手術を受ける気はしません。

 

2014年5月12日月曜日

どうせ死ぬならがんがいい(11)

 「やるからには徹底的に」が医者の性

 手術も抗がん剤も、やりすぎるぐらいにやらないと気がすまないのが医者です。

 たとえば海外では、1期の喉頭がんといえば放射線治療をするから、9割近くが喉頭を残せます。でも日本だと1期でもどんどん切ってしまう。

 胃がんの人が「治療してくれ」と言ったら手術になる。最初のうちは疑問を抱かなかったけど、胃がんの手術をすると体重が80キロあった人が50キロになったりして、げっそりやつれてしまいます。手術前と後のQOL(生活の質)の落差があまりに大きいのに疑問を覚えて調べたら、昔は胃がんでも楽に死んでいたことがわかったと言います。

 逸見政孝さんの場合は、スキルス胃がんで臓器を3キロも摘出したあげく、数ヶ月で亡くなるなんて。手術で寿命を縮めたとしか思えない。

三笠宮寛仁親王が、喉頭がんで気管切開されました。のどに穴を開けて、人工発声していたでしょう。手術をするとみんな、あんな大変なことになるのに耳鼻科医は簡単に切ってしまいます。

子宮頸がんもいまだに7割ぐらいは大きな手術をしています。リンパまで大きく取っちゃうから排尿・排便障害がおきるし、膣も短くされてセックスがしにくくなる、足はむくむ、というような大きな後遺症を抱えこみます。放射線治療なら治る率は手術より高く、後遺症はたまに直腸出血が見られるぐらいだそうです。

 

2014年5月9日金曜日

どうせ死ぬならがんがいい(10)

 死に時が来たら食べなくなる

自然のしくみは、不自然なことをしなければ、穏やかに安らかに亡くなっていけるようになっているはずです。死に時が来たら食べなくなるのも、生きものにとっては当たり前のことで、無理やりチューブで栄養を取らせたりするのは、患者を苦しめるだけ。鼻チューブの苦しさなんて相当なものです。息も絶え絶えなのに患者は苦しいから、無意識のうちにチューブを引き抜こうとする。それを防ぐために患者の手を縛りつけたりして、悲惨のひとことです。

 日本人に多い胃がん、肺がんなどの9割の固形がんには、「抗がん剤で生存期間が延びた」とか「再発の予防に抗がん剤が有効」という実証はない。自覚症状が現れてから放射線などで対処すればいい。慌てて治療を受けてはなりません。

 固形がんの早期発見・早期治療は延命に結びつかないんだから、胃がんや肺がんなどのがん検診は患者にとってまったく意味がありません。ムダなショックを避けるためには、検診を受けないのがいちばんですと言います。

 

2014年5月7日水曜日

どうせ死ぬならがんがいい(9)

 診断基準の問題

 胃がんの診断基準は、日本と欧米では違うそうです。欧米ならがんとは診断しない異型上皮(上皮の病変)に、日本では「がん」と名前をつけて手術したりしています。そういう異型上皮は近藤氏は「がんもどき」にも入れていません。

 日本でポリーブガンと呼ばれている腫瘍は、欧米では「がん」ではなく、「良性腫瘍」と診断されます。

 がんについてはっきり分っているのは、遺伝子の傷が、がんを引き起こすということです。放射線、紫外線、たばこの煙に含まれる物質、ウイルスなど生体を攻撃する物質がいろいろあり、体の中に入って細胞の中のDNAの鎖をちょん切ったりします。そうやって遺伝子に傷がつくと、細胞が果てしなく分裂を続け、がんになると言います。

 いまの医学で「早期がん」として発見できるのは、直径1センチ前後からで、実は、これはがんの一生の中では細胞がおよそ30回も分裂を繰り返したあとの「晩期」の段階なんです。がん細胞は非常に小さくて、1つの細胞が大体1ミリの100分の1くらいの大きさです。1センチのがんを見つけると「早期発見」と言われますが、直径1センチに育ったがんの中には、10億からの細胞が含まれます。最近、分子生物学の研究が進んで「がん細胞には、できるとすぐ転移する能力がある」ということが明らかになっています。「がんは大きくなってから転移する」という説は間違いだということがはっきりしてきたわけです。つまり、本物のがんは、早い段階で多数の臓器に転移しています。だから、検診で見つかってから標準治療(外科手術、放射線、抗がん剤)をしても治りません。あちこちに転移したがんを治した、という正式な報告は実は一例もない。結局がんは、ほかの臓器への転移があるかないか、がんができた場所で運命が決まってしまうと言います。

 昭和天皇や、アップルの創始者のスティーブ・ジョブズ氏の命を奪った膵臓がん。これは本物のがんが非常に多い。

 肺がんも一般的に「助からないがん」というイメージが大きい。肺がんは、咳や痰などの症状があって見つかるのは本物のがんが多い。反対に症状がなく検診で見つかった肺がんは。十中八九がんもどきです。

 「痛い、苦しい」など、日常生活で不便を感じる症状がなく、検査や人間ドックで見つかるのはほとんど、がんもどきです。

 固形がんは治療をあせらず様子を見るのが賢明。そもそも「早期発見・早期治療」というのは、完治の可能性がある感染症の結核で成功した手法ですから、がんに対して「早期発見・早期治療」という言葉を使うと、早く見つければ完治する、という誤解を与えてしまいます。

 がんは傷口に集まって増殖します。腹膜の方にまでがんが及んでいると、切ったところにがん細胞が集まって、そこで増殖するから、かえってがんの進行・再発を助けることになってしまいます。傷のついていない腹膜は、つるつるしていますから、がん細胞はとっかかりがないから入り込めない。傷がついてギザギザしたところにスッと入り込んで増殖する。メスが入って正常組織のバリアーが崩れたところにがんがはびこってしまいます。
 肺、胃、大腸、子宮などのがんでは、早期がんでも手術されると合併症・後遺症が非常に大きく、死亡することもあります。    

2014年5月5日月曜日

どうせ死ぬならがんがいい(8)

 「潜在がん」はいろんな臓器にかなりの頻度で見つかります。50歳を超えた男性の2人に1人は、死後解剖すれば前立腺がんが見つかる。けれども、それは放っておいても大きくならない「潜在がん」なのです。わずかな病変まで検出できる方法があったら、日本人の3人に1人は甲状腺がんと診断されるでしょう。でも甲状腺がんで亡くなる可能性は10001つです。

詳しく検診するほど、また最新鋭機を使うほど、がんはいくらでも見つかりますが、その大部分は、命を奪わない潜在がんか「がんもどき」といいます。

がんの集団検診をやめたら、がんが減った
 統計データも、がん検診に近寄ってはいけないことを示しています。

 旧チェコスロバキアで1990年に行なわれた、喫煙男性6300人を二分した肺がんの追跡調査で、検診を受けた群は胸部レントゲン撮影と細胞診を半年ごとに3年続けました。放置群は検診を受けませんでした。

 検診群の肺がん発見数は108人。肺がん死は64人。ほかの死因を含めた総死亡数341人。放置群は肺がん発見数82人。肺がん死は47人。総死亡数293人。定期的に肺がん検診を受けていたグループの方が、肺がんでの死亡率も総死亡率も圧倒的に高かった。そのほか、日本の長野県泰阜村での調査結果も提示しています。

 集団がん検診でがんの発見頻度が高まり、がんもどきや潜在がんも「がん」と診断されて治療の対象になってしまう。結果的に「がん死」が増えてしまうと言います。

 「早期発見、早期治療」がいくら増えても、患者の延命に結びついていない。人口に占めるがん全体の死亡率も1960年代から今まで、変わっていません。

がんは自覚症状が出てから医者にかかればいい。

 がんには、見た目は同じでも「早い段階でさまざまな臓器に転移し、命を奪う本物のがん」と「転移しない、命にも支障のないがんもどき」があります。

 

2014年5月2日金曜日

どうせ死ぬならがんがいい(7)

  前日からの続きです。中村仁一氏、近藤誠氏の言いたい放題なので、眉をつばしながら読んでいます。同業のひとが反論しないのかと見ていますが、まだないようです。二人の意見は、まずまず合っているのでしょう。以下続けます。

 「最近なんだか顔色が悪い、めしを食わない、やせてきた、おかしい」。しかし、本人たちは痛みを感じていない。がんが痛むのならもっと早い時期に見つかってしかるべきでしょう。病院に行くきっかけは「痛み」ではなく、血を吐いたり、痰に血が混じっていたり、レンガ色の小便が出たり、ということがきっかけになります。そのままなにもしないでがんを放っておくと、最後まで痛まず、消えるように逝かれるというわけです。

 がんの進行そのものも、世の中の人が思っているほど速くないと言います。悪性で進行が速いと言われるスキルス胃がんでさえも、診断がついてから数ヶ月で亡くなった人は皆無といいます。テレビの司会者の逸見政孝さんは、最初の手術から10ヶ月で亡くなられましたが、近藤氏の知る限り逸見さんと同じタイプで1年以内に亡くなったひとは皆無で、3年以上生きた人が何人もいると言います。このあたりは、曖昧でなく具体的な数字がほしいところです。

 中村氏は、老人ホームに移ってからは、痛み止めの麻薬を使ったことがない。見つかった段階が手遅れで、痛んでいないがんは最期まで痛まないとはっきり言えると言っています。

「死」とは、心地いいまどろみの中での、この世からあの世への移行なんですとも言っています。近藤氏は、がんの9割は「末期発見・治療断念」「放置」が最も望ましいと言っています。

がんの症状がなくて健康なら、がんを発見するための検査は、年齢を問わず避けた方がいい。検診によるがんの早期発見は、患者にとって全く意味がない。それどころか、必要のない手術で臓器を傷つけたり取ってしまうことで身体に負担を与えますから命を縮めます。

70歳前後の有名人が何人も、よせばいいのに人間ドックを受けたためにがんが見つかり、目いっぱいの血みどろの闘いを挑んだ末に、玉砕して果てています。