2014年4月23日水曜日

「どうせ死ぬなら“がん”がいい(6)」

 がんを放置した場合は、中村氏が老人ホームで体験した限りでは、実に穏やかに死んでゆくそうです。

放置すれば痛まずにラクに死ねるがんは、胃がん、食道がん、肝臓がん、子宮がんなど、少なくない。治療で徹底的にがんを痛めつけたあとにたどりつくホスピスでも3割は痛まない。不必要な手術をしたり、抗がん剤治療をしたりするから、苦しい死、悲惨な死になってしまう。

ウィーンのビルロート教授は、1881年に世界で初めて胃がんの切除技術に成功し、「胃がん切除術のパイオニア」とされています。でも患者は再発のために4ヵ月後に亡くなりました。その後のビルロート教授は失敗続きで、ほとんどの患者が胃を切除されると体力を消耗し、合併症や後遺症も多くてすぐ亡くなったといいます。

 なのに胃切除手術は胃がんの標準的治療法になって、どんな胃がんでも胃の全部か3分の2を切除することが当然とされてしまった。そして、いまに至るまで、「胃切除手術をしたほうが生存期間は長くなる」という実証は出ていない。

年齢を問わず、胃がん、食道がんを放置すると少しずつ体力が衰えて、痛んだり苦しんだりしないで、枯れて眠るように自然な死を迎えます。たとえ痛みが出ても、モルヒネや放射線などの治療で苦痛を除くことができます。

 人間は、確実に死を迎えるわけですが、がんであったとしたら、不要な手術や治療などせずに安穏に死にたいものです。次刊に続きます。

2014年4月21日月曜日

「どうせ死ぬなら“がん”がいい(5)」

 患者がなにも言わないと、日本では必ずと言っていいほど抗がん剤が使われてしまう。

そもそも抗がん剤は薬ではなく猛毒だから、がん細胞をやっつけるときは正常な細胞もやっつける。

がん細胞より正常細胞の方が分裂するスピードが速いから、抗がん剤にやられて死滅するのは、正常細胞の方が多い。各臓器の正常細胞が少しやられただけでも機能が低下して、抗がん剤の毒性が強く出て、患者を苦しめます。さらに各臓器の正常細胞があるレベル以上にやられると、その臓器は機能しなくなり、患者は死んでしまう。

一方、がん細胞は抗がん剤でやられても、1個でも残れば再び分裂して数を増やすので、がん細胞の方がはるかに生き延びやすい。

近年、吐き気を抑える制吐剤や、副作用を弱く感じさせるステロイドを使って、抗がん剤治療の回数や期間を長びかせる傾向があります。

その結果、抗がん剤やステロイドの毒性が増大して、結果として患者さんの命を縮めてしまう。

転移性の固形がんは治らないから、抗がん剤治療はその毒性で患者を苦しめるだけ。

2014年4月18日金曜日

「どうせ死ぬなら“がん”がいい(4)」

 がんの9割に抗がん剤は無意味

乳がんは、リンパ節を取っても生存率があがらないことが、1985年までに証明されている。なのに日本ではいまも一生懸命リンパ節まで切り取っています。

 米国では早期前立腺がんの患者367人をいっさい治療しないで15年観察した結果、「何もしないで様子を見る」、つまり放置療法が最良という結論が出ています。スウェーデンでの結論も同じでした。ところが日本では相変わらず、前立腺がんの多くは見つけ次第切り取られています。

 わたしの経験では、一部を切り取るのではなく、全摘出します。この時に神経細胞も切ってしまい、完全なEDになるようです。

また日本人のがんの9割を占める「固形がん」は抗がん剤で治ることはないし、延命効果さえ「ある」ときちんと証明されたデータは見あたりません。

ほとんどの抗がん剤治療には、副作用と縮命効果しかありません。

固形がんというのは、胃がん、肺がん、肝臓がん、大腸がん、乳がんのような、かたまりを作るがんです。つまり日本人がよくかかるがんには、抗がん剤は効かない。抗がん剤で治るがんは全体のほぼ1割にすぎません。急性白血病や悪性リンパ腫のような血液のがん、子どものがん、睾丸の腫瘍、子宮の絨毛がん。

急性白血病は、若い人は抗がん剤で治りやすい。たしか、夏目雅子さんも急性白血病だったように思うのですが、担当医師の抗がん剤の選択ミスだったのでしょうか、若いのに亡くなりました。抗がん剤による治療も、年齢とともに難しくなって60歳を過ぎるとまず治らない。高齢になったら、抗がん剤を使っても意味がありません。

また手術や放射線で治らない再発・進行がんにも抗がん剤は効きません。

がんは根こそぎもっていかないと治療の意味がない。しかし、抗がん剤で腫瘍を小さくしたり、腫瘍マーカーの数値を減らすことは出来ても完全になくすことはできない。

抗がん剤を認可するときの「有効」という判定にしても、「がんのしこりが一定程度、小さくなる」というだけです。

医者が「効く」というのは、がんが治る、延命するという意味では全くない。8割は縮小効果すらなくても認可されてしまう。

がんのしこりは、抗がん剤でいったん小さくなったり、「消失」しても必ずまた大きくなります。「抗がん剤でしこりが小さくなった」というデータがあっても「それが延命に結びついた」という実証は、世界のどの国でもまだ示されていません。

2014年4月16日水曜日

「どうせ死ぬなら“がん”がいい(3)」

 長生きもけっこうだけど、どういう状態で生きるかが重要。ボケたり、いつ死ねるかわからないままの寝たきりや、植物状態で生かされるのはだれでも願い下げです。その点、がんはけっこうな病気だと思いますよ。がんで手遅れといわれたら、執行日が近未来にほぼ確定して準備が出来るんですから。

本物のがんだと闘病期間も短いからまわりが大事にしてくれる。ただし、治療しなければの話です。今は、9割の人が医療死。つまり病院死をして、死ぬ前にたっぷり地獄を味わわされています。

がんがここまで嫌われ、おそれられる大きな理由は、麻薬を使っても抑えきれないほどの強烈な痛みや苦しみを伴い、のたうちまわって死ぬと思われているからでしょう。

痛みが強調されすぎて、痛まなかった人たちが表に出てこないから、みんな「がんは痛むもの」と思い込んでいる。

患者はみんな、手術で痛んだり、抗がん剤で苦しむわけです。「むかつく」とか「髪の毛が抜ける」とかいろんな症状が出るってことは、抗がん剤がそのひとにすごい悪影響を及ぼして、ひどい負担で、体が「やめてくれ」って悲鳴をあげているということでしょう。

治療の結果の痛みを、当人もまわりも「がんの痛み」だと思いこんでしまう。強烈な痛みや苦しみはがんのせいじゃなく治療のせいなんです。

2014年4月14日月曜日

「どうせ死ぬなら“がん”がいい(2)」

 この本に入ってゆきましょう。

 日本人には、がんで死にたいといっているひとはいないが、外国ではけっこう多いみたいです。

 日本人の死因でがんの次に多いのが脳卒中と心筋梗塞。このふたつはポックリ逝けると思われているけど、ウッときて一瞬のうちに死ねるなんてことは、ほとんどない。何回も発作を繰り返して、なんとなく生き延びて、だんだん病状がひどくなっていったり、半身不随になってリハビリをやらされたり。近藤氏の親戚も、脳卒中で半身不随になって10年近く家にいたりしました。

 わたしの母は、脳卒中で倒れました。後頭部の下が、血液で重く垂れ下がっていました。もちろん意識もありません。63歳でした。危ない状態でしたので、わたしは、4日間泊まりこみで、病院に詰めました。4晩過ぎた夜、これは長期戦になるなと思い、着替えその他を取りに家に帰ろうとしましたら、様態が急変し、そのまま亡くなりました。痛みもなく、本人が望んだ彼岸の中日にあの世へ旅立ちました。気を遣うひとだったので、無事退院できてもあとのリハビリが大変だとか、親戚のものが言っているのを無意識のうちに聞いたのかも分りません。だから、脳卒中で苦しむなどということは分りません。

2014年4月11日金曜日

「どうせ死ぬなら“がん”がいい(1)」

中村仁一氏(右)と近藤誠氏(左)
  がんに対する本がたくさん出ています。今回紹介しますのは、中村仁一氏と近藤誠氏によるもので、宝島社新書から発行されています。2012年10月23日に初版が出て、2013年3月28日で第5版が発行されています。結構な売れ行きというべきでしょう。わたしは、いつものように書評欄を見て買いました。中村仁一氏は老人ホームの付属診療所の所長として、多くの老人の末期を診ており、近藤氏は、本物のがんとがんもどきという話題を提供し、毎日のようにタブロイド版の夕刊紙を賑わせています。慶應義塾大学病院の講師兼放射線科の臨床医がよく務まるものだと感心しています。相当のいやがらせがあるだろうとも想像しています。

 二人ともがんに対して苛烈な批判を行なっています。この本に書かれていることが正しいのかどうかは、素人にはわかりませんが、わたしは胃がん(胃がんもどきかも分りません)でした。開腹せずに内視鏡を診ながら削りました。現在まで、大きくなっていないので大丈夫でしょうということです。

次に前立腺がんも発見され、担当の医者は前立腺を全摘出しようと勧めました。全摘出するとがんになる心配がないからいいではないかというものです。しかし、これは、さすがに勉強しました。結局、分ったのは、その病院には、放射線治療の機器がなく、放射線治療をするにも出来ません。さらに外科医としての腕も自負していたのでしょう。さかんに勧めました。しかし、全摘出していたら、読売新聞の渡邊会長のように一生尿洩れの不具合に悩まさなければならなかったでしょう。すこぶるQOL(生活の質)が悪くなるのです。今では、軽度の前立腺がんは、放置することも治療方針の一つだそうです。
 
 
 

2014年4月9日水曜日

危険・狡猾な世帯課税

 所得税課税改革に取り組むポイントは、「個人課税」から「世帯課税」への移行、配偶者控除の廃止というものです。改革の理由として、女性の社会進出を促進するためだといっていますが、これが問題です。

OECD(経済協力開発機構)の主要24か国では、

個人課税は日本や英国、カナダ、スウェーデン、オランダなど15か国、

個人・世帯選択は米国、ドイツなど5か国、

世帯課税はフランス、ルクセンブルクなど4か国

となっています。

1979年代以降、世帯課税から個人課税へ移行したのが9か国、世帯課税から選択制への移行は2か国、選択制から世帯課税への移行は1か国となっており、「世帯課税から個人課税へ」というのが世界の趨勢になっているようです。

 その大きな理由は、個人課税の方が、課税の中立性があるからだと言われています。たとえば専業主婦が働こうとするとき、世帯単位課税では累進税率が効くため、税金が増えて不利ですが、個人課税なら中立的です。逆に結婚については、世帯課税が有利(結婚ボーナス)になりますが、個人課税では中立的です。

 税制には、簡素、公平、中立の三大原則がありますが、個人課税の方が中立性の点で優れています。世帯課税は、夫婦間の所得を合算した上で再び分割して課税するなど、一般的に複雑になり、個人課税の方が簡素といえます。また、個人課税の方が公平でもあります。

 個人課税が基本で、必要な時には控除措置で対応するのが、世界の常識になっています。今回の安倍内閣の政府案は、こうした世界の「常識」に全く反していると高橋洋一氏はいいます。

 本当に女性の社会進出を狙うのであれば、政府方針と全く逆に、所得税の基本は中立的である個人課税のまま、配偶者控除を拡充すればいいわけです。配偶者控除の拡充で多少は税収が落ちますが、女性に働いてもらって、その所得に課税して税収を増やすことができます。

 政府(財務省)の本音は、配偶者控除の廃止による増税でしょう。しかし、それでは世間の批判を浴びるので、個人課税から世帯課税への移行で、減税の雰囲気を出しているのだろうと高橋氏はいいます。配偶者控除と個人課税を同時に主張した場合、世界の趨勢からいって個人課税がおかしいとされ、配偶者控除だけが残るという「悪魔のシナリオ」からもしれないと高橋氏は警笛を鳴らしています。

 狡猾な官僚は、個人単位より家族単位の方がいいと信じている人が多いことをうまく利用して、個人課税を吹き込んでいるのでしょうが、あまりにひどい「増税志向」は、国の方向を誤らせる危うさを感じざるを得ません。

2014年4月7日月曜日

肉まんに見る習近平政治

 習近平主席が昨年末、仕事帰りに寄った肉まん屋があります。
 260年前にうり二つの物語がありました。清朝最盛期の乾隆帝は除夜に民情を探るためにお忍びの旅から戻り、街で1軒だけ開く名もなきシューマイ屋で食べました。後に自ら「都一処」(都で唯一)と記した額を贈り、店は客で埋まったといいます。

 習氏は肉まん屋で自ら盆を運ぶ姿を庶民の携帯カメラで撮らせました。肉まん、シューマイともに北京名物です。習氏は清朝の最大版図を固めた乾隆帝の故事に倣ったとの憶測が飛び交いました。

 肉まん屋の列は、習氏が一年余り前に発した「8項目規定」の産物です。高級料理店がつぶれるほど倹約が宣伝されましたが、真の狙いは別にありました。大衆人気をバックに自らへの集権を図る巧妙な世論操作の仕掛けが隠れているといいます。

 国営中央テレビは従来は、政治局常務委員の動きを序列順に満遍なく扱っていましたが、この慣例が一変しました。

 習氏は頻繁に登場するのに、他の常務委員の出番が大きく減りました。視聴者本位に見せかけて習氏の動きを目立たせる仕組みです。

 中央テレビは1月末、看板報道番組「焦点訪談」で指導者らの動静報道が急減したと自ら報じました。中央テレビは前政治局常務委員、周永康に絡む汚職疑惑の渦中にあります。解任された公安部副部長、李東生が中央テレビ出身で、1990年代に焦点訪談を世に出しました。

 習氏は「8項目規定」の順守を迫る調査チーム「巡視組」を作り、頻繁に地方に派遣しているといいます。前任者の院政の力が強い1年目は動きにくいのが普通ですが、習氏は「一気に権力を固めなければお飾りに終わる」との危機感を抱いているようです。

 習氏が改革への抵抗勢力と見るのは江沢民の一派だそうです。その一員の周永康は失脚した薄来を擁護したとされます。そこで党中央に国家安全委員会という集権への組織を作りました。

 「一度、虎の背にまたがると、下りるのは難しい」。虎は周永康。習氏が虎を仕留めればいいが、失敗すれば逆に食われるというわけです。

2014年4月4日金曜日

朴槿惠大統領の慰安婦解決への条件

  韓国政府が日本との関係改善に向けて想定する旧日本軍の従軍慰安婦問題の解決策が31日に明らかになりましたが、結局、進んでいません。
朴槿惠大統領の主張する慰安婦問題解決の条件は法的責任の認定、安倍首相が謝罪、財政で支援である。

2014年4月2日水曜日

慰安婦問題

 現在、朴政権内では、「佐々江案」をもとにした解決案が検討されているようです。日本政府が法的な責任を認めたうえで安倍晋三首相が謝罪し、政府予算で元慰安婦支援を実施するというのが、3条件の主な内容です。

韓国政府や支援者の間では「『法的責任』でなくとも、実質的に日本が責任を認めたと受け取れる表現でよい」との意見も出始めているようです。

ここにきて朴政権は旧日本軍の関与を認め謝罪した河野談話を検証する安倍首相の動きに反発しています。安倍政権側も「世論に弱い韓国政権と交渉するには相当な信頼関係が必要で、いまのままでは難しい」(政府筋)と積極的に動くそぶりをみせていません。