2013年10月6日日曜日

不老不死の夢 

 絶大な権力と財力を手に入れた独裁者が最後に望むのは不老不死の薬だといいます。

 秦の始皇帝は49歳で亡くなっていますが、一説には寿命を延ばすと信じられて飲んだ水銀中毒だったともいわれています。生物は必ず死ぬのかといわれれば、実は死なない生物もいるというので、驚きです。
 
 バクテリアは好適な条件下でありさえすれば、基本的に不死であるといいます。

 一方、多細胞生物の個体やセックスをする単細胞生物の2nの個体は必ず死にます。生物学的にいうセックスとは、n(配偶体)とnが合体して2n(接合体)を作り、これが減数分裂してnを作り、再び合体して2nを作ることの繰り返しにより種を存続させる繁殖方法です。

 生物が老化して死ぬのは大きく2つの原因あると生物学者の池田清彦氏は言います。1つは時間とともにDNAに損傷が蓄積されて正常な機能が失われていくこと。もう一つは細胞分裂のたびにテロメアと呼ばれる染色体の末端が少しずつ切れること。人間では50回分裂するとテロメアが消滅して細胞の寿命が尽きると考えられています。

 バクテリアがなぜ不死なのかは分かっています。バクテリアの染色体は環状で末端がなく、分裂してもきれません。もう1つは、細胞分裂の速度が、DNAの損傷速度より速いので、無傷のバクテリアの系列が存続可能なためです。

 バクテリアより高等な真核生物の染色体は棒上なので、分裂のたびに必ず少し切れます。だから不死になるためには切れたテロメアを伸ばす必要があります。人間の体細胞(2nの細胞)はこの能力をもたないものが多いので、個体はいずれ死んでしまうのです。さらにはDNAに蓄積される損傷を完全に修復することもできないので、老化も不可避です。

 人間の個体は死すべきものですが、生殖細胞系列は不死なのです。生物学的には2nの個体はnの生殖細胞を作る装置にすぎません。

 少し前までゾウリムシは不死だと思われていました。ゾウリムシは単細胞だが、セックスして、個体は2nなので不思議でした。最近、この謎が解けたといいます。ゾウリムシはセックスの相手がいないと、減数分裂してnを2つ作り、すぐに合体して2nに戻って生き続けます。

 人間はゾウリムシのような芸当はできないので、どのみち死は免れないというわけです。

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