2013年4月7日日曜日

その食べかた、間違っています(2)~葛谷雅文

 
昨日からの続きです。件の85歳の女性は、60代のときから、20年間忠実に守り続けました。彼女は動脈硬化になる危険から免れたかもしれませんが、脳出血のリスクを抱えたということもできると言っています。

動物性脂肪は確かに血清コレステロール値を上げますが、後期高齢者にとっては効率のよいエネルギー源でもあります。炭水化物、たんぱく質が4kcal/gのエネルギーとなるのに比べ、脂肪は9kcal/gを産生でき、極めて効率が良いのです。

ここで、「粗食が体にいい」という世間的常識についても考えてみましょう。
 人間の手足の骨格筋は20代をピークに加齢とともに、萎縮していき、筋肉量としては70歳で20代の60-70%程度になるといわれています。

七十五歳の骨格筋量が減少し、脂肪に置き換わります。タンパクの合成よりも分解のほうが上回ると、骨格筋組織を構成する筋細胞数が減少したり、個々の筋細胞が萎縮したりしてしまいます。筋肉量が徐々に低下し、筋力も低下します。この現象をサルコペニア(加齢性筋肉減少症<減弱症>)と言います。
 
サルコペニアがあると高齢者はふらついたり、転倒しやすくなったりします。
 筋肉タンパクは筋肉へ供給されるアミノ酸からつくられるので、アミノ酸のもとである肉などのたんぱく質を十分に摂っているかどうかがポイントになります。

なまじ生活習慣病予防の知識がある高齢者は、肉の摂取自体が不健康につながると思い込み、意識的に避けたりもします。このところの粗食ブームもそれに拍車をかけているようです。

「日本人の食事摂取基準」によると高齢者のタンパク質推定平均必要量は一日あたり0.85g/kg(体重)とされています。例えば60kgの体重の人は51gのタンパク質が一日に必要となります。実際には高齢者の摂取量は推奨量より20~40%程度少ないとされます。すなわち、体重60kgの高齢者では一日につき15kg程度タンパク質が足りないことになります。

欧米の観察研究では、タンパク質摂取量が多いほど骨格筋量の低下率が低いことが報告されています。ただでさえ筋肉量が減少しやすい高齢者が現状を維持するには一日あたり0.85g/kg(体重)程度の摂取が必要との指摘もあります。

年をとったら野菜中心の淡白なものを考えがちですが、血の滴るようなステーキとまではいかなくとも、肉を食べる習慣は大事なのであると葛谷はしめくくっています。

  食生活は、見直したほうがいいように思います。亡くなった評論家の三宅久之氏が、あとどのくらい食べれるか分らないのに粗食はしたくないと言っていましたが、正しかったようです。高齢者は、比較的滴るようなステーキが好きなようです。

0 件のコメント: