2013年2月28日木曜日

松下幸之助は泣いている(13)

  1952年にヨーロッパを代表する大手家電メーカー・フィリップス(オランダ)との合弁で松下電子工業を設立した時のことです。当初、フィリップスは技術指導料として売上の7パーセントを支払うよう要求してきました。

連日の熱のこもった交渉の結果、技術指導料は4.5パーセント、経営指導料3パーセント、つまりフィリップスへの支払いは、差し引き1.5パーセントというラインにまで値引きさせることに成功しました。すべての交渉が終わった調印の日に幸之助氏は現れ、にこやかに書類にサインしたといいます。最初にトップ同士が握手を交わしてしまうと、実際の交渉に当たる担当者は、とにかくまとめることが最大の目標になり、ギリギリの交渉ができなくなってしまいます。良い条件を引き出せなかったら席を立って帰る、それぐらいの気迫で臨むためにはトップは最後まで出ない方がいい。それが幸之助氏の考え方だったのです。

家電復活のための第一の処方箋、それは「人材重視の経営にシフトせよ」ということになると思います。

国内ではともかく海外では、高くても売れるほどのブランド力はなかったというのが実情でしょう。

高級品はあくまでもニッチマーケットでしかありません。

高級品はあくでも「見せ筋」であって、自社の技術力の高さをアピールし、ブランドに憧れを持ってもらうための広告塔的な商品と位置づけなくてはいけません。


部品をできるだけ汎用品でまかない、アジアのEMS(電子機器受託製造サービス)企業を利用して生産する「売れ筋」の普及品に力を入れていかなくては、V時回復は難しいということになります。

技術の流出ですが、生産技術に関して言えば、もう相当なものが流出してしまったと考えるべきでしょう。

次に雇用の空洞化ですが、競争力のない産業が国内に残ることは、長い目で見れば国民の負担になってくることを十分に認識すべきだと思います。低価格を求められる「売れ筋」の普及品は原則的に海外生産に切り替え、メイド・イン・ジャパンであることが付加価値となって高く売れる高級品、職人的な技術を生かせるハイエンド製品を中心とした「見せ筋」の生産のみを国内で行うというように、バランスのとれた棲み分けをしていくことがベストな選択ではないでしょうか。

0 件のコメント: