2013年2月27日水曜日

松下幸之助は泣いている(12)

 デジタル化の進展に伴うもう一つの大きな潮流が家電業界に隕石のようなインパクトを与えているインターネットです。

iPodがヒットしたのは、デジタル音楽プレーヤーとしての使い勝手やデザインがよかったこともあるでしょうが、「iTunesストア」というネット上の店舗から音楽を「いつでも、どこでも」ダウンロードして買うことができるサービスとセットだったことこそが、多くの人々に受け入れられた最大の要因ではないでしょうか。 

2011年度のアップルは売上高1082億㌦に対して、時価総額は5319億㌦。これがサムソンの場合、売り上高はアップルより多い1401億㌦にもかかわらず、時価総額は1531億㌦にとどまっています。パナソニックとソニーの時価総額はそれぞれ165億㌦、140億㌦で一桁違います。これは、世界のマーケットがすでに単品のハードをつくって売るビジネスモデルには限界があるという判断を下したということではないでしょうか。

家電が単品でその性能を競い合う時代が終わり、インターネットとの相乗効果でどんな新しい利便性を提案できるかを問われる時代に突入したのだと言えるでしょう。

日本の家電メーカーがアップルのようになれなかった理由を探していくと、結局は「人材」の問題に帰り着くのだと思います。世界のビジネスモデルがどう変化するのか読めなかったように、インターネットと家電が融合するユビキタス時代の趨勢もやはり読めていません。読める人材がいないのです。

アップルはハードの製造だけでなく、サービスの提供についても水平分業的な発想を取り入れていたのではないでしょうか。

すべて自社内で完結させず、共存共栄していこうという姿勢は幸之助の考え方に近いものだとう言えるのではないでしょうか。

家電業界でいえば、国内に世界の約一割を占める大きい市場があるので、日本でそこそこ大きいシェアを取ると世界でもかなり上位に入ってきます。すると世界が見えたような気になって、自分たちの視野が狭いのに気がつかなくなってしまうのです。

「遊び心」のようなセンスはソニーに限らず、あらゆる家電メーカーにとってより重要になってくると思います。

日本の家電業界が復活に向かうためには、何をすべきなのか、最初にとりあげたいのは「人材」です。

買収や合併後にしっかり活用できる事業や人材を見きわめ、そこだけを買うようなMAのやり方です。アメリカでは「ミート・アンド・ボーン(肉と骨)」という言い方をしますが、要するに肉になり骨になり栄養のある部分を買わなくてはならないという意味でしょう。

 

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