2013年2月26日火曜日

松下幸之助は泣いている(11)

 1996年、創業者のスティーブ・ジョブズ氏は、一度解任されたアップルに復帰しますが、当時アップルの製品は全米の大手パソコンショップの店頭からほとんど姿を消していました。小売店が店頭に置きたがらないほど人気が落ちていたからです。

「いくら新製品を開発しても消費者の目に届かなければ意味がない」と考えたジョブズ氏は、販売戦略強化のため、自ら小売り部門を立ちあげました。これが現在のアップルストアなのです。

その後、ジョブズ氏はギャップやターゲットといった大手小売業の幹部を次々に引き抜いて、アップルストアの強化に当たらせました。

「ジーニアスバー」と呼ばれる技術サポートコーナーも設置されました。

アップルストアではスタッフに、商品を売り込むのではなく顧客の問題解決をサポートするのだという理念を教えています。

接客にも独自のメソットがあり、

「一人一人の顧客を温かく迎える」

「顧客の全ニーズを丁寧に聞き出す」

「その日すぐ使える解決方法を提示する」

「顧客が抱える問題や懸念に耳を傾け解決する」

「感謝と再度来店してほしいという気持ちを込めて見送る」

と、その内容は非常に人間的なものです。 

売る前のお世辞より売った後の奉仕、これこそ永久の客を作るといいます。

アップルストアの全米二位に続いて、デルのダイレクトストアも全米八位の売上をあげる存在です。デルの主力は、あくまでネット上のオンラインストアですが、実際に商品を手に取って見たり、スタッフに直接相談できる「リアル・サイト」の展開もしており、相乗効果での販売拡大が功を奏している形です。

大量販売のためにどうしても必要なディスカウントストアとのつきあいとは別に、ブランドを確立するための直販・直営店という存在が見直される時期がきているように思います。 

家電とはこういうものという常識の範囲内で、テレビであれば画面が美しい方が、デジタルカメならば画素数が多い方が、ビデオレコーダーなら録画時間が長い方がよいのだから売れるはずだ、と考えてきます。

しかし、そういった家電業界の常識とは異なる次元で思いがけない商品提案を行い、2000年代以降に大ヒットを連発している企業があります。それがアップルです。アップルの製品は、技術的には決して画期的な新技術を使っているわけではありません。

iPhone にしてもiPodにしても、部品は汎用品がほどんどで、製造は中国のEMSに委託しています。はっきり日本の家電メーカーにも十分つくれた可能性のある製品なのです。ただ、アップルの製品には日本の家電メーカーが持ちえなかった「常識や既存の知識から解放された純粋な思いつき」がありました。それが多くの人々の心を捉え、世界中で大ヒット商品となったのです。

 

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