2013年2月20日水曜日

松下幸之助は泣いている(5)

 日本以外の家電売り場に行って、冷蔵庫、洗濯機、乾燥機などについては、日本勢を見つけること自体が難しいでしょう。この面でも大きくシェアを伸ばしているのはアジア企業です。

日本製の家電は売り場の端っこに追いやられていきました。デジタル技術の進歩にともない、かってない大量生産・大量販売こそが市場での勝敗を分ける時代となった2000年代。その環境変化に対応できた企業は大きく業績を伸ばし、対応が遅れた企業は苦戦を強いられています。その答えの一つが、「垂直統合型経営」から「水平分業型経営」への大転換でした。

垂直統合と水平分業には、それぞれの良さがあるのですが、現代のデジタル家電業界に限っていえば、スピード感という面で水平分業に分があるように感じられます。

水平分業を効率的に使えば、開発期間なしで商品開発が可能になります。固定費が少なくてすみますので、フットワークの軽い経営が可能になり、その分だけ商品価格を抑えることもできます。

IT業界のヒューレット・パッカードやデルなども、この水平分業をうまく活用しています。パソコンなどのIT機器とデジタル家電は、半導体や液晶パネルなど、使う部品もかなり共通しており、二つの業界の間には境界線がほとんどなくなりつつあります。

日本の家電業界はこの水平分業化の流れに完全に乗り遅れました。

著者もシャープの堺工場を見たことがありますが、その堂々たる威容がかつての戦艦大和に重なって仕方ありませんでした。太平洋戦争当時、すでに航空機による戦いが勝敗を決する時代になっていたにもかかわらず、日本海軍は大艦巨砲主義にこだわりました。その背景には日露戦争での日本海海戦の勝利があり、「最後は戦艦を中心とした艦隊決戦で勝敗が決まる」という思想を捨て切れなかったわけです。

過去の成功体験を捨てきれるかどうかはビジネスの世界でもよく指摘されるとおりです。

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