2013年2月18日月曜日

松下幸之助は泣いている(3)

 次には、大量販売ができる大手ディスカウントストアと組んで売ることも重要になってきます。海外では、総合ディスカウントストアが家電の売上でも主力になっています。

店の取り分(マージン)も低く抑えることができ、価格競争で優位に立ちたいメーカーにとっては、商品を大量に引き受けてもらえることともあわせて、ぜひ強化したい販売チャンネルということになります。

このように部品を大量に仕入れて、労働力の安い国で大量生産し、世界中のディスカウントストアで大量販売するという流れが定着してくると、「デジタル家電のコモディティー化」という現象が起こります。

コモディティーというのは、あまり特徴や個性のない「日用品、汎用品」といった意味で使われることが多い言葉です。「パラダイムシフト」と言ってもいいほどの価値の転換をリードした製品の例をもう一つあげるとすれば、それはアップルの飛躍のきっかけとなったiPodでしょう。

初期のiPodは、音楽データを記録するのにマイクロハードディスクドライブを使っていました。ドライブには予期せぬ衝撃や振動が加わります。当時のマイクロハードディスクドライブはまだそれほど信頼性が高くなかったので、アップル以外のメーカーはこのタイプの製品を大々的に市場に投入するに躊躇しました。ドライブや故障修理の対応が大変だと考えたからです。しかし、アップルは「壊れたら買い替えすればいい」あるいは「返品交換すればいい」という発想の転換でiPodを大ヒットさせました。

日本の家電製品の品質の良さには「故障しにくい」という要素も含まれていましたので、デジタル家電のコモディティー化はその面での強みもあまり意味のないものにしてしまいました。

日本製デジタル家電も大量生産して安く供給できれば、性能では決して負けていないのですから、いい勝負になったはずです。しかし、日本のメーカーは国内生産にこだわり、労働力の圧倒的に安い中国で完全生産している海外のライバル企業と比べると、かなりのコスト差が生まれてしまいました。

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