2012年10月31日水曜日

日中問題についての米マスコミの態度


外交評論家の日高義樹は、今回の日中問題に対する米マスコミの対応について、次のように述べています。
919日付『ニューヨーク・タイムズ』は、国際面で北京の特電として、「米国は第2次大戦で日本に勝ち、尖閣諸島をはじめとする島々を占領統治、そのあと中国に返したと中国人は考えている」
という記事を載せていましたが、むろん、これは事実と異なります。

さらに、ニューヨーク・タイムズは、「尖閣諸島は沖縄とともに大昔から中国の領土であった」という防衛関係者の話をそのまま伝えていましたが、これも事実と異なります。

米の大手マスコミはほとんどがリベラルで、「革新」「革命」という言葉に弱いといいます。中国についても、「民衆が立ち上って革命を起こした」という思いいれが強く、一方、日本に対しては「救い難い保守反動」という印象を持っています。

中国が急速に海軍力を増強して南シナ海と東シナ海を自分の領土にしようとしていることについて、米マスコミは、ほとんど報道していません。

米政府では、数少ないまともな指導者といえるカート・キャンベル国務次官が、「尖閣諸島は、日本の領土で日米安保条約が適用される」と発言してもマスコミは伝えません。
「米マスコミが公正だ」などと考えるのは大間違いだと日高氏は書いています。

こうした米マスコミの実情をよく考え、外務省をはじめとした日本政府は外交戦略とPR戦略を立案し、対抗していかなくてはならないと結んでいます。
日本の政府は、日露戦争を最後にして、戦略的な発想から乏しくなっています。受験教育のためでしょうか。

2012年10月30日火曜日

ドイツが原発ゼロに向かう理由


  ドイツを訪問中の「国民の生活が第一」の小沢一郎代表は消費者団体や連邦議会のエネルギー委員、商工会議所のエネルギー担当者らと会談しました。その折の商工会議所の反応は、「原発を止めれば、電気代がかさむ。製造コストが上れば、競争は厳しくなる。日本の企業側はこう言って『原発ゼロ』に反対しているが、ドイツは違ったといいます。

「福島の事故を見て、原発は人間がコントロールできないと思った。加えて、原発を動かせば、高いレベルの廃棄物が出る。その処理にもコストがかかるので、原発は経済合理性には合わない」と語りました。

ドイツは政党、消費者団体、経済団体らがすべて、原発ゼロ方針でまとまっています。小沢氏は、「自分たちの政策が間違っていないことを確信した」と述べました。
 
やはり、ドイツのほうが、理知的な感じがします。

2012年10月29日月曜日

原田泰氏の震災復興欺瞞の構図(38)


 前日からの続きです。
「捕獲理論は、何か問題があると、すぐにきちんと規制しろの大合唱となる日本のマスコミの思考法に根本的な疑問を投げかけている。原子力発電所を、今すぐに止めることはできないから、規制機関は依然として必要である。また、原子力発電を止めるにしても、どのように止めるかの規制がいる(止めてもきちんと処理をしなければ半永久的に放射能を出し続ける)

うそをついているうちに真実が分らなくなってくる
「しかも、現実はさらに恐ろしい。政府の事故調査・検証委員会中間報告書(20111226)によれば、福島第一原発を管理していた東電の人々は、事故が起きたときの緊急用非常冷却装置の使い方を知らなかったという。現実には、規制されていた人々が、規制していた人々と一緒になって、原発は安全だと言い張っているうちに、安全でなくなったらどうしたら良いかも分らなくなっていたのだ」
恐い話です。しかし、真実です。東電の人は、優秀な人がたくさんいっているだろうなと思っていましたが、単なるテストの点数がよかっただけだったのでしょうか。

「太平洋戦争中、わが軍は常に大勝利と国民を欺いていた大本営が、ウソをついているうちに、自分たちがどれだけ負けていて、その上でどう戦ったら良いのかも分らなくなっていったのとよく似ている。

原子力発電を進めてきた大きな要因として原発の発電コストは圧倒的に低いという認識があった。それがなければ、そもそも原発安全神話を作る必要もなかった。

コストが低いと認識していたからこそ、巨額の地元対策費を配布しながら、原発を造り続けて54基も持つことになっただろう」

2012年10月28日日曜日

原田泰氏の震災復興欺瞞の構図(37)


 前日からの続きです。
「日本には、原子力委員会、原子力安全委員会、原子力安全・保安院と3つも規制機関があるが、どれも役に立たなかった。

原子力委員会は予算2億、原子力安全委員会は7億、原子力安全・保安院は350億程度の予算を持っている。予算を見ると、本当に規制しているとしたら、それは原子力安全・保安院で、それ以外の組織は飾りであることが示唆される。
実際、原子力安全委員会の委員長自ら、福島第一原発の建屋に溜まった高放射線量の汚染処理について、『どのような形ですみやかに実施できるかについて、安全委ではそれだけの知識を持ち合わせていない。まずは事業者(東京電力)が解決策を示すとともに、原子力安全・保安院にしっかりと指導をして頂きたい』と述べたという。

テレビに出ていた原子力の専門家の大学教授は、メルトダウンは起きていないと言っていたが、実は起きていた。東電は、実はうすうす気が付いていたようだ。専門家より、事業者の方が、ずっとわかっているのだ。

本来は、安全を守るためにどうしたら良いのかを首相に勧告する専門集団のトップであるが、実はどうしたらよいか分らない人が原子力安全委員会の責任者だった。当初、会見で説明していた、原子力安全・保安院のスポークスマンも、そもそも、通商政策の専門家で、原子力について素人だ。

情報は規制される側にある
規制する者よりも、規制される者が圧倒的に情報をもっている。
規制は公益のためとされているが、実は、何が公益かはよく分らない。電力料金を無理やり低く規制すれば、電力不足が起こる。これは開発途上国でよく見られる現象だ。すると、電力料金を上げておいた方が、実は、公益にかなうのかもしれない。これは電力会社にとっても都合の良い話である。

電力会社はわずかでも料金を上げてもらえれば、莫大な利益を得られる。規制者は小さな利益しかもっていないが、規制される者は巨大な利害を持っている。天下りを受け入れるなど大したコストではない。とすれば、規制者は規制されるものに捕獲(Capture)され、規制は、規制される者の利益を守るために行われる。規制が、公益のために行われると考えるのはナイーブすぎるという訳だ。
このことを1971年に初めて主張したのは、シカゴ大学のノーベル賞受賞経済学者故ジョージ・スティグラー教授だ。原発を推進する側として取り込まれていたのは、規制者とともに学者やメディアの一部でもあったからだ」

2012年10月27日土曜日

原田泰氏の震災復興欺瞞の構図(36)


昨日からの続きです。
植民地との類似性
「日本は日清・日露の戦争で勝利し、アジアの強国となり、ヨーロッパ並みの植民地を有する帝国となった。
その後どうなったのか。多くの指導者が、戦争に勝って植民地を得たからこそ、日本は強国に、豊かになれたと考えた。朝鮮と台湾に加えて満州を実質的に植民地化した。しかし、実は植民地経営は持ち出しだった。当時、満州で得られたのは大豆と質の悪い石炭しかなかった。満州国が経済的に発展したのは事実だが、それは日本からの投資があったからだ。

日本を豊かにするために植民地が必要だと言って戦争をしたのに、持ち出しであったとは嘘をついていたことになる」
無知な国民は騙され、植民地を維持するために実に多くの血と命が流されました。そして、メデイアは、無力です。それなのに影響力が大きいという困った状況にあります。メデイアは判断力を養ってほしいものです。少なくとも誰の発言は正しいか、正しくないかの判断力は持ってほしいものです。

「日本全体では少しも利益がないのに、特定の人々には利益がある。その利益を守ることによって、日本全体の利益をないがしろにしていく。ナショナリズムが利権になるとき、国家は危うくなる。

原発に関する国家戦略は、おそらく昔にはあったのだろうが、やがて地元自治体と電力会社という周辺によって決定されるようになってくる。戦争という国家のもっとも基本的な決定が、出先の関東軍によって決められてしまったのとよく似ている。

日本はイタリアに次ぐ世界で第2の脱原発国家になる。原子力という国策が、国家によってではなく、地元の意向で決定されるのはおかしいという人もいる。最初の原発はともかく、原発の増殖は地元と電力会社の都合で決まったことではなかっただろうか
増殖が周辺で決まったことなら、その停止が周辺で決まっても何もおかしくない」