2012年6月6日水曜日

なぜアメリカは金正恩を捕獲しないのか

なぜアメリカは北朝鮮への攻撃を躊躇するのでしょうか。
アメリカは朝鮮戦争休戦以後、少なくとも3度、北朝鮮への攻撃を試みたことがあります。
1度目は68年、北朝鮮がアメリカのスパイ船・プエブロ号を拿捕したとき、2度目は76年に板門店で国連軍と北朝鮮軍の間で衝突が起きたとき。そして3度目が94年、北朝鮮の核開発を止めるために、クリントン政権によって寧辺の核施設を空爆する計画が練られたときです。北朝鮮が核保有を公式に宣言するのは06年ですから、いずれもそれ前の話です。

「核施設を叩いて北朝鮮と全面戦争になった場合、どんな事態が想定されるか」ミシュレートするよう各方面に指示しました。
ところがシミュレーションの結果は、アメリカにとってまったく予期していないものでした。そしてこの結果こそが、いまもってアメリカが北朝鮮攻撃を躊躇する、最大の理由となっているといいます。
シミュレーションの結果は、開戦から90日で米軍に52000人を超える人的損害が出て、さらに韓国軍にも49万人の死傷者が出るだろう、というものでした。
最終的にはアメリカが勝つという結果ですが、戦費は1000億㌦を超えるだろう、という予測も出ました。あまりに被害とコストが大きすぎるため、計画は白紙にせざるを得なかったのです。

これについて、青山繁晴・独立総合研究所長が解説します。
「戦車部隊や空軍といった『正規軍』に限った戦闘を考えれば、アメリカの圧勝となります。しかし、北朝鮮には暗殺や破壊工作を専門とした特殊部隊が存在しています。この特殊部隊との戦闘を想定すると、『死傷者の数はアンカウンタブル』という結果が出ました。VXガスやサリンといった化学兵器を使用してくることを考えれば、これに対抗する手段を持たないアメリカ軍は、想像以上以上に脆弱だということです。

アメリカが北朝鮮を攻撃すれば、局地的な戦闘ではなく、全面戦争、それこそ『第二次朝鮮戦争』の幕開けとなります。ソウルに住んでいるアメリカの人口は、オールバニ(ニューヨーク州の州都)に住んでいるアメリカ人口より多いのです。
アメリカは北朝鮮に人質を取られているなようなものです。自国民を危険にさらしてまで、北朝鮮を攻撃する必要はないと判断しています。

もしアメリカが北朝鮮を攻撃すれば、中国がどう出るのかは、かなり不透明です。
周恩来と金日成の間で締結された「中朝友好協力相互援助条約」によると朝鮮戦争で中国が北朝鮮に義勇兵を派遣して共闘したことがきっかけとなり、『もし中国か北朝鮮の一方が侵略を受けた場合には、互いに軍事援助を行う』という約束が交わされたといいます。

昨年より、平壌市内では頻繁に停電が起こっています。平壌市民の間では、「電気も自由に使えない状態で、なにが『2012年には大国の仲間入りを目指す』だと指導層に対する不満が高まっています。

故・金正日総書記は、軍部内で不満が高まっていることを察知すると、幹部らに高価な贈り物をしてその不満を収めていました。しかし、正恩第一書記の懐には十分な資金もありません。
金正恩は、『外貨を稼ぐために、労働者をもっと多く海外に派遣せよ!』と指示を出しました。
現在も北朝鮮は世界各地に3万人ほどの労働者を派遣しているが、さらに1万ほどの派遣を検討しているといいます。
海外の空気に触れた労働者が現体制に疑問を持ち、揺れさぶりをかけるような行動に出るだろうという韓国の研究所もあります。
“体制維持”のための労働者派遣が、逆に現体制を揺れさぶることにつながるかもしれない。
金正恩は経済援助を求めて、年内にも中国を訪問する予定だ。
しかし国内情勢が不安定な状況で国を空ければ、その瞬間にも平壌市内で“革命の火”が上る可能性があると週刊現代の5月26日号には書いています。

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