2012年1月7日土曜日

佐野眞一の津波と原発(41)

 原発労働に似ている労働って何かある? 売春に似ているのかな。

「後ろめたい労働という意味では似ているかもしれませんね」

 原子力はその生態系をはるかに逸脱して、人類が制御できるかどうかわからない、いわば“神の領域”のエレルギーである。炭鉱労働者と原発労働者の間に広がる大きな溝は、おそらくそうい根源的な違いから生まれている。

田中角栄は新幹線、高速道路、そして原発はワンセットだという演説をしているんです。

水力、火力で動く新幹線というのは想像しにくいけれど、原子力で動く新幹線というのはピタッとくる。

東電はなぜ、あの地区に原発を持ってきたと思いますか。

「米がつくりにくい土地だったことは、理由としてあげられると思います。あそこは丘陵地帯で、アップダウンはきついし、土から塩が出る。だから、酪農くらいしかできなかったから」

 ――東京電力はうまくいったのに、東北電力は、同じ地域にある浪江、小高でなぜうまくいかなかったか。

「理由は二つあると思います。一つは、東北電力の計画は原発の危険性が明確になってから発表されたことです。それから、はやり東北電力は“田舎待”で、土地の買収や住民の説得が東電にくらべて下手だった」

原子力ムラの悪い構造というと、具体的にどういうことですか。

いまさかんにメディアが言っている隠蔽体質とかですね。

たしかに隠蔽体質です。311から3ヶ月近くたって二号機、三号機もメルトダウンしていたことがやっと発表されたわけですから。

「あの会社の奥の奥にあるのは、圧倒的なパターナリズムなんです。お前ら知らないんだろう、みたいな。その裏返しで、オレは日本を背負っているんだという意識が強烈にある」

民は之に由らしむべし、之を知らしむべからず、か。もし本当に、東電の背骨にこんな封建的な道徳観が流れているとするなら、恐ろしい話だが、これから続々と東電のボロがでてくることが予想される。

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