2011年8月21日日曜日

中国高速鉄道の危倶

 北京-上海の鉄道建設では不適切な契約が50億元(610億円)あったとされ、劉志軍・鉄道相ら幹部が更迭されました。贈賄などの資金を作り出すために手抜き工事があったとの疑惑も出ています。

723日午後8時半(日本時間午後9時半)過ぎ、中国浙江省温州市附近で在来線型の高速鉄道が脱線事故を起こし、2両が高架から落下しました。少なくとも35人の死者を出した追突・脱線事故で、中国が国を挙げて急ピッチで進める高速鉄道計画に改めて疑問が持ち上がっています。

中国は5年という短期間で世界最大の高速鉄道網を建設するため、巨額の資金をつぎ込んできました。

国営テレビは、追突事故は異例の状況が重なったことが原因だと報じています。落雷が先行する列車を直撃し、別の列車が追突するの防ぐ電子警告システムが機能しなかったといいます。

今回の電力障害は、北京・上海高速鉄道(中国版新幹線)が開業1カ月足らずで走行停止を3回以上起こした原因と類似しています。

盛光祖・新鉄道相は今年、国内鉄道網を現在の91000㌔から2015年までに12万㌔に拡大する計画をあくまでも遂行すると宣言しました。支出目標は削減されており、政府は高速鉄道の新設を減らす意向だと思われます。

高速鉄道計画をあからさまに批判してきた北京交通大学の趙堅教授にとって、今回のできことは驚きではありません。同氏は、比較的近距離の大都市間であれば高速道路は意味をなすが、遠距離交通は飛行機の方が選択肢として優れており、高速道路の膨大な建設費は「経済発展の重荷になる」と最近の評論で述べていました。

趙氏は、高コストで少人数しか輸送できない高速鉄道より、収容人数が多い従来型の鉄道を建設する方が効率が良いと主張しています。

中国は今月、マレーシアに高速列車228両を納入する初の輸送契約を結んだと発表しました。

一部の中国メディアは724日、緊急停車していた車両は、カナダのボンバルテイアの技術をベースにした「CRH1」、追突した車両は川崎重工業の東北新幹線「はやて」をベースにした「CRH2」と報じました。

「中国は高速鉄道運行ノウハウが乏しい、不安」と元鉄道省幹部は運行安全面の課題をかねてから指摘していました。

6月末に開業した北京・上海高速鉄道(中国版新幹線)でも開業2週間で電力供給トラブルなどが3回あり、緊急停車しています。高速鉄道の命網ともいえる運行・安全管理システムで不備があったとすれば、中国が目指す高速鉄道の輸出産業化の実現が遠のくのは避けられません。

中国は来年秋の共産党大会で胡氏から習近平副主席への指導部の世代交代することが予想されます。これにともなって、国威発揚の大型事業が相次ぎますが、71日の共産党創設90周年に合わせて開業を急いだ北京・上海高速鉄道でトラブルが相次ぐなどで批判が高まっていす。

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